一銭はずむから止まれと追った汽車
どんな伝承か
明治三三年の七月、豊州鉄道が石炭を運ぶために、後藤寺、池尻、川崎、第一大任の各駅を貨物駅として開いた。田川郡川崎町の池尻でのことである。汽車というものにまだ慣れない村の人が、後藤寺へ向けて動きだした列車を追いかけながら、一銭余計に出すから止まってくれと叫んだという。切符を値切ったり走り出した列車を追いかけたりする、鉄道が来たばかりの土地の笑話の一つとして収められている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。