狼におびえる陣屋の臆病侍
どんな伝承か
昔、志賀村の陣屋に、ひどく肝の小さい侍がいた。用事で小川へ出向く途中、狼の出そうな山道に差しかかると、出たら斬ってやると刀の柄に手をかける。けれども続けて、狼が出なければ互いのためだ、出れば斬らねばならないし、出なければこちらも怖い思いをして刀を抜かずに済むのだから、出ないほうがお互いに好都合だとつぶやきながら通り過ぎたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
滑川村史 民俗編(滑川村史)
『滑川村史 民俗編』は、埼玉県比企郡滑川村(今の滑川町)の村史の民俗編から、伝説と噂話の節を抜き出したものである。盗まれるのを拒んだ阿弥陀、生首八幡、福田鉱泉の始まり、河童の証文などの伝説と、オトウカ(狐)やムジナに化かされた話、三峯のオオカミ様、人魂や火柱などの噂話を、話者の地区とともに短い条で収める。沼と小高い山の多い村の、村人の身近な不思議の語りが中心である。