都幾川の河原で沸かした焼き石湯
どんな伝承か
埼玉県比企郡嵐山町菅谷の都幾川べりでは、昭和二十年代後半、ミナオシと呼ばれた箕作りの一家が焼き石湯を沸かしていた。松島始によれば、河原に人がすっぽり入れるほどの穴を掘ると、まわりから水がしみ出してきて中が水でいっぱいになる。そのわきでがんがん焚き火をし、子供の頭くらいの石をたくさん火に入れておく。焼けた石を穴の中へ次々に放り込むと湯ができ、そこへ入ったという。鷹野弥三郎『山窩の生活』にも、これと同種の原始的な入浴法が記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。