信玄が飲み分けたまたたび清水
どんな伝承か
武田信玄が大門峠を越えて敗走した折、喉が渇いて一歩も進めなくなり、うつつのうちに宮ノ上のまたたび清水をもう一度飲みたいと漏らした。家臣の一人が早馬で汲みに走り、夜を日に継いで峠を下ったが、小茂ヶ谷で強清水を思い出し、同じ清水だからとそれを汲んで差し出した。一口含んだ信玄は、これはまたたび清水ではないと飲み分けた。家臣は打ち首になりかけたが、主を喜ばせたい一心で、より早く届く冷たい水を汲んできたのだと答えた。信玄はその忠義を認めて許したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第1巻 3 (東信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第1巻(三)東信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち東信地方の伝説と世間話を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌などの伝えを、条ごとに採集地を添えて収める。双子池や白駒の池の主、望月の駒、甲賀三郎、ごまを作らない村々の禁忌、京の岩・宮下・菱野村の七不思議など、佐久・小県の土地の伝えが並ぶ。