寺へ来た死に際の妻と唐桟の羽織の父
どんな伝承か
利根郡川場村中野の寺から来ていたHという人物の、昭和九年当時の体験である。当時、今の妻女Tちゃんの姉と夫婦になっていたが、妻の健康がすぐれず実家で療養させていたところ、七月に入り重体になった。七月十二日の夕方、寺の西で家族が外に出ていると、静かな下駄の音がして、今死にかかっているはずの妻女の姿が現れた。家族が声をかけても答えず、寺の中に入って消えてしまう。翌日、妻は息を引き取った。その後Hは、幽霊になって会いに来た人の妹と結婚し、村に移り住んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。