伯父の笑顔
どんな伝承か
語り手の女性にとって、京都に住む伯父は実家にあたる人だった。伯父が二年越しの長患いに伏している間、彼女は毎年一度は必ず帰って見舞い、月に一度は便りを欠かさず、珍しい品も折々に送った。娘のいない伯父は、その手紙を我が子からの便りのように喜んでいたという。三年前の九月十四日の夜九時ごろ、子に添い乳をしながらまどろんでいると、重い病のはずの伯父がにこにこと笑って目の前に立っていた。驚いて目を覚まし、夢にしては鮮やかすぎると訝しんだ。翌朝、伯父が前夜九時に息を引き取ったと京都から電報が届いた。駆けつけて聞けば、伯父は最期まで彼女の名を口にし、一目会いたいと言い続けていたそうである。
原典より
私が子供に添乳をしながらうとうとして居りますと、不思議な事には大病の伯父がにこにことして私の前に立つて居ります、…—— 心霊現象の文献と其科学的研究(心霊学研究会・心霊研究・死後の生活) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の文献と其科学的研究(心霊学研究会・心霊研究・死後の生活)
『心霊現象の文献と其科学的研究』は、欧米の心霊研究と死後の生存をめぐる論説を集めた解説書である。ロッジやマイヤーズの心霊研究、霊媒と交霊、死後の生活を科学・医学・仏教・キリスト教の立場から論じる文章、輪廻転生、幽霊と幻覚、透視・テレパシー、神憑り、霊媒ユーザビアの実験、霊能を装う詐術、自動書記や棒占いを扱う。「心霊論者の主張」「死後の生活」「不思議の現象と心理研究」「驚異の心霊現象自動現象」の四篇に分け、各節を多くの小見出しで区切る。