白坂トンネルで鏡のように真似る怪列車
どんな伝承か
東筑摩郡東川手村、潮沢の山中での話。雨の降る六月のおぼろ月夜、白坂トンネルのあたりまで来た列車の機関士が、前方から来る列車に気づいた。非常汽笛を鳴らすと向こうも鳴らし、止まると向こうも止まる。まるで鏡に映したようにこちらの真似をするのである。機関士が意を決して一直線に進むと、ぶつかるかと思った瞬間に怪しい列車は姿を消した。同じことはその後も二、三度、いずれも月のかすむ夜にあったが、古ギツネが一頭線路で轢かれて死んでからは絶えた。近くには今もその狐の祠があるといい、土地の人は狐が化けた列車だと信じている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。