墓穴に入った老僧と穂高岳の鉦
どんな伝承か
悟りを開こうと穂高岳に籠ったが果たせずに下山した老僧がいた。老僧は自ら墓穴を掘り、その中に埋まって絶命した。それから七日の間、穂高岳から鉦の音がしたという。穂高岳が老僧を弔ったのかも知れぬ。老僧の素性はつまびらかでなく、人びとはこれを公安さまと呼んだ。墓は穂高町にある。高い峰から響いてくる鉦の音は、さぞ荘厳であったろうと語られている。
原典より
それより自ら墓穴を掘り、その中に埋まり絶命した。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。