黒薙川上流に響く山神の笛
どんな伝承か
黒部渓谷の黒薙川上流での話。昔、杣人が川の上流で道に迷ううちに日が暮れた。山の端に月がかかったので歩き続けていると、どこからか笛の音が流れてきた。こんな夜更けに誰がと不思議に思い、音をたよりに探っていくと、笛の音は急にぴたりとやんだ。里に戻って古老に話すと、それは山の神が月に向かって笛を吹いていたのであり、邪魔をしてはならない、よく祟られなかったものだと言われたという。
原典より
今は昔、杣人が黒薙川の上流をさまよっているうちに日が落ちた。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。