伊吹島の崖へ誘い込む明かりの船
どんな伝承か
尾池兼雄が十五、六歳の時に父から聞いた話。うたせで漁に出た夜は雨もようで風がなかった。仕事にならないので帰ろうと、伊吹島の方へ向けて走っていた。すると舳に明かりをさした船が一艘、前を走っている。その後についていったところ、伊吹島の北の端の三十三番の崖のところへ、どんと船が行ってしまった。帆を下ろし、竿で突っ張ってやっとそこをかわしたが、前の船の明かりも船も消えてしまった。前の船が消えたと同時に、崖が目の前に映って来たという。
原典より
大正の頃、積丹半島突端の漁村での話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。