陰膳に守られた漂流者の帰還
どんな伝承か
常二はあるとき友達と二人で沖へ漁に行ったが、急に風向きが変わって大嵐となり、櫓も櫂も流されて山も見えぬ沖へ押し流された。食う物も水もなくなり死のうと思ったが、時々舟の回りにアジやトビウオがつき、それを釣ったり突いたりして食べた。常二は食事時になると急に腹がふくれた心地がした。父が毎日陰膳を供えて無事を祈っていたからだといわれる。七日目、神に最後の祈りをして眠ると「西へ向って走れ」とお告げがあり、板切れで漕いで八日目に島へ着いた。流れ着いたのは伊豆七島の青ヶ島であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。