舶来自転車に乗れない友さん
どんな伝承か
大正の初め頃、轟に友さんというおんちゃんがいた。その人が舶来の自転車を買ったが、背が低いのに二十八インチの大きな自転車なので足が届かない。人が来るとすぐ降り、降りたら何か台を探して、その上に上ってひょいと乗るという調子であった。乗ると大きな声で「オーイ、ヨッチョッテ、ヨッチョッテ」と呼ばわった。あるとき友さんが自転車を押して走っていると、煙草屋のおばさんが「おまん今日は自転車にのらんがかよ」と尋ねた。友さんは「今日は急いじょるき、乗る気になれん」と答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。