豪雪の駅で汽車に飛び乗る
どんな伝承か
昭和五九年三月十二日、山形は豪雪の冬だった。白鷹町から車で送ってもらい、発車の十分前に今泉の駅へ着く。切符売り場で行き先を告げると、係の人は分厚い帳面を出して首をひねりながら計算し、ようやく切符を作ると、急行券は車内で買え、汽車はもうホームに入っていると言う。まだ改札もしていないのに、である。そこへ改札係がのろのろと雪除けの戸を開けて現れた。階段に足をかけたところで発車のベルが鳴り、雪の積もった階段と長い跨線橋を重い荷物でよたよた走り、凍った段を転がるように降りて、待ってくれと叫びながら飛び乗ったとたん、汽車は動き出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。