豪雪の駅で汽車に飛び乗る
どんな伝承か
昭和五十九年三月十二日、松谷みよ子が書き留めた出来事である。豪雪の冬で山形もすっぽり雪だった。白鷹町から今泉の駅まで車で送ってもらい、十分前には着いた。切符売場では前の客が金沢まで買い、続いて信越線の黒姫までと頼むと、係員は分厚い帳面を出して計算し、首をひねることしきりであった。ようやく切符ができると、もう汽車がホームに入っていると言う。改札はまだしていない。のろのろと改札係が現れ、売場の人は窓口から首を突き出して金沢行きの人を呼んだ。雪の積もった階段と長い架線橋を重い荷物を持ってよたよた走り、凍った階段を転がり降りてようやく飛び乗ると、汽車は動き出した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。