宿に二人前の膳が出た心中の男
どんな伝承か
播磨の加西郡のある村で、男女が井戸に身を投げて心中を図った。男だけが息を吹き返し、その場を逃れて伊勢参りに出かけた。ところが道中の宿に一人で泊まっていると、宿の者が二人分の膳を運んできた。連れなどいないのに二人前が出されたことに男は驚き、恐ろしくなって、とうとう自ら命を絶ったという。井上円了が真怪の例として書き留めた短い話である。
原典より
其の途中旅館に宿泊中、自分獨りなるに、宿屋の方では二人前のお膳を持つて来たのに驚き、恐ろしくなつて男は終に自殺した。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。