竹串の紙に書く大道透長安
どんな伝承か
内郷の葬送で立てる竹串の紙には、今ではお寺に頼んで文字を書いてもらう。真言宗なら梵字をいくつか、ほかの宗派では経の一句を書く。住職によれば本来は五言絶句だが、いまは省いて一句だけを記すといい、著者が見た紙はみな『大道透長安』の五字だった。宗派ごとに書く字は違うのに、竹を立てる儀式そのものはどの派も認めている。著者はこれを、古い巫術が宗教と張り合って退かない姿とみる。この句は禅の語録から採られたもので、仏教の教理と庶民の俗信とが折り合った一例だと論じている。
原典より
是れも同じ住職の話であるが、此の紙に書くべき文字は一定して居る、元来は五言絶句の詩ではあるが、今では節約して唯一句を書くと云ふ事で、自分の見たのは悉く『大道透長安』と書いたものばかりであつた。—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。