高熱の中で見た水の向こうの花畑
どんな伝承か
昭和二十年五月、パラチフスが流行し五月五日に入院した。入院二日目頃から下痢と高熱がひどくなり、一時は危篤状態に陥った。熱に浮かされていたとき、澄んだ水の向こう岸に色鮮やかな花が咲き誇る花畑が見え、遠くで誰かが呼ぶ声や小鳥の声も聞こえた。水に足を入れようとするたびに母に起こされ、薬やスープを飲まされた。七月三十一日の午後に退院し、後にあれは三途の川を渡ろうとしていたのだろうと振り返っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。