三途の川の手前で呼び戻された祖父
どんな伝承か
昭和十九年の冬、山本郡藤琴村での話。長患いしていた七十四歳の祖父が危篤になり、子や親戚が枕元に集まった。雪の深い年で、迎えに行った医者が来ないうちに祖父は息が絶えた。子どもたちが水で唇をぬらしていると、祖父は急に息を吹き返して目を開け、みなを不思議そうに見た。祖父は、山を越え石の原っぱを越えて行くと川があり、向こう岸にきれいな花が一杯咲いていた、川を渡って行こうとしたら遠くから呼ばれて夢から覚めてしまった、と残念そうに語った。親戚の婆さんはそれを三途の川だと言った。祖父はその翌日に亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。