二人の母の間に写った亡夫
どんな伝承か
青森県上北郡三沢村の石場寅次郎の母と、同じく八戸町の石場鑑吉の母とが、写真師を招いて相並んで撮影してもらったところ、不思議なことに二人の間に人影が現れた。何者かと熟視すれば、数年前にコレラで亡くなった寅次郎の母の夫であった。一同は写真を眺めて、ただひたすらに怪しんだという。東北新聞が伝えた話である。井上円了はこれについて、写真師が一度写したガラス板をよく確かめずに再び写し取ると、前の像が残ることがあると聞いており、もとより偶然の出来事であって不思議ではないと述べている。
原典より
青森縣上北郡三澤村石場寅次郎の母……、同……八戸町石場鑑吉の母とは、寫眞師を招き相並びて撮影せしに、不思議なるかな二人の間に……と現はれたる……があり、何者にやと熟視すれば、是ぞ數年前コレラにて……せし寅次郎の母の夫なる…—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が昭和十三年に編んだ幽霊譚と幽霊論の集成である。葬送の習俗や海外の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜の作用による幽霊の説明、乃木大将や許斐大尉の見た幽霊などの実話、古典や伝説に現れる男女の幽霊・怨霊・生霊、幽霊写真、化物屋敷、霊界通信を集める。三篇に分かれ、第二篇は幽霊を男女・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・食物に縁ある幽霊・前知らせなど八項に分類し、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。