鳳陽城入城の刻に座敷で鳴いた鶏
どんな伝承か
昭和十三年二月二日午前十一時、火砲数門を有する頑強な敵を蹴散らし、鳳陽城占領の一番乗りをした森田豊秋部隊長は、高知県高岡郡浦ノ内村立目(現須崎市浦ノ内立目)の出身であった。厳父は森田豊和翁で、一家は軍務に服する名誉の家庭であった。豊和翁が語るには、旧正月の午後、村の有志や近親が屠蘇を汲みながら出征軍人の話をしていると、どこからか鶏が入って来て朗らかに鳴いた。何かの瑞兆ではないかと皆で言い合ったが、ちょうどその時が四男豊秋の入城を完了した時であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。