津田沼の雑木林に誘い出された野口殺し
どんな伝承か
岡本殺しの翌年、大正三年十一月三日、桐原集一は日清戦争で同じ隊にいた事業仲間の予備特務曹長野口善袈裟を、千葉県の幕張駅に近い津田沼の雑木林へ誘い出した。両国駅前で買った酒を二人で飲むうちに隙を見て短刀で惨殺し、生きているように見せかけて家へ葉書を出し、横浜から偽の電報まで打った。十八日、演習中の兵士が死体を見つけ、ポケットの質札から身元が割れた。家族の話から桐原の名が浮かび、船橋署と警視庁の合同捜査で、逃走した桐原を新宿で捕らえた。義妹に預けたトランクから研いだ短刀が出て、鍔の小さな黒い染みが人血と鑑定され、桐原は犯行を認めた。
原典より
* 位牌が動く (269)* 亀の子を握ったまま (270)* お墓の掃除 (272)* 位牌と鼠 (273)* じゃれつく犬 (274)* 怪談会の怪異 (275)* お天気祭 (276)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。