西成岩村の百十二枚と降札の偏り
どんな伝承か
尾張の東南端にあたる知多郡西成岩村では、慶応三年九月十日に御札降りが始まり、十月二十五日までに百十二枚が降った。村の庄屋が鳴海の陣屋に差し出した「西成岩天降神々軒別帳」と、小栗三郎兵衛の雑記がその記録である。札が見つかった時刻は朝が最も多く、次いで夜で、朝起きると家の前や軒下に降っていたという例が大半だった。二百三十八戸の村で札が降ったのは七十七戸で、十年後の地価帳と照らすと上層の家の六割以上に降ったのに対し、下層の家では二割にとどまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ええじゃないか始まる(田村貞雄・1986年(昭和61年))
『ええじゃないか始まる』は、田村貞雄が一九八六年に著した幕末の民衆運動「ええじゃないか」の研究書である。慶応三年に三河から遠江・駿河へ広がった御札降りの発端を、牟呂村の「二夜三日正月」、御鍬百年祭、吉田宿の助郷騒動、秋葉信仰との関わりから、村方の文書や日記、市町村史の史料をもとに追う。はしがきに続く八章で発端から波及、仕掛人をめぐる諸説、祭の後の「代替わり」までを論じ、主な史料はその原文を別組で示す。