亡夫の顔を見に通った粟国島の女
どんな伝承か
伊波普猷の『南島古代の葬制』には、那覇の北西六十キロほどにある粟国島の例が載る。伊波の知人の家で働いていた粟国島生まれの女性は、夫が死ぬとまる一週間、一日も欠かさず亡夫の顔を見に通った。親戚から、それだけ通えば故人も満足するだろうからもうやめたらどうかと諭され、しぶしぶその日から行くのをやめたという。遺体は日ごとに変わり果て臭いも強くなったが、彼女には汚いとも怖いとも思う気持ちは少しも起こらなかったと伝わる。遺体が置かれたのは、島で後生山にあたる場所だったろうと著者はみている。
原典より
文献に見える古代の殯第12章 陰陽師・安倍晴明の墓なぜ晴明の墓とされたか長野県・木曾山中の晴明の墓安倍晴明の実像は、ほとんどわからない末裔の墓は実在する—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。