野老沢の木賃宿に住む乞食
どんな伝承か
西会津町の面倉で会った女性が生まれたのは、河沼郡柳津町飯谷の麻生である。只見川左岸沿いの集落で、昭和四十八年頃までは対岸の沼田街道へ渡し舟で往復するのが普通であり、只見川最後の渡しとして知られていた。野老沢は、そこから只見川を三キロばかり下った、やはり同じ左岸の集落である。経営者の母親が変装しておもらいに出ていたという木賃宿は、この村にあった。その宿には乞食たちがたくさん住んでいたといい、縄張りをめぐって喧嘩をすることもあったと語られている。木賃宿がどのような宿泊施設であったかは、いまでは知る人も少ない。
原典より
第6章 悲劇を伝える二つの小地名谷川岳南麓に暮らして狩猟罠「オス」を仕掛けていたころ誤ってオスに入り圧死した旅芸人自ら仕掛けたオスに敷かれて死ぬ「円次さんのことは聞いています」第7章「猿は猟師に命乞いをする」は本当か—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。