宮の渡しの釣台と離れぬ男女の風説
どんな伝承か
伊勢参宮は男なら一生に一度は果たすべきものとされ、その道中で身を汚す振る舞いをすると、男女の体がつながったまま離れなくなると恐れられていた。文政十三年、おかげ参りが大流行したときには、街道を釣台に担がれて行く者があり、交わったまま離れなくなった男女を運んでいるのだという噂がしきりに広まった。ところが確かめてみると、宮の渡しで怪我をして歩けなくなった参詣人を釣台で送り届けていただけだったと『嬉遊笑覧』は記す。こうした風聞が本気にされるほど参宮の清浄を重んじる念は強く、のちには、夫が参宮に出ている間に留守の妻が不義をしても、神罰で体が離れなくなると信じられるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。