得分を持って生まれた乞食の娘
どんな伝承か
昔、よそから帰りが遅れた男が山中のお堂に泊まると、夜中に何者かがお宮の神をお産の見物に誘う声がした。神は客があると断り、誘った者だけが出かけた。戻ったその者は、ある家の男の子には得分(ブニ)がまるでなく、橋の下の乞食の女の子は得分をたっぷり持って生まれたと話した。家に帰ると自分に男の子が生まれていたので、男は乞食の娘を息子の許嫁にした。嫁が来て家は栄えたが、男は素性の知れない嫁を恥じて追い出した。嫁は町の商人の後妻となり店を富ませた。落ちぶれた元の夫が物乞いに来ると嫁は桝に小判を入れて与えたが、底の穴からこぼれた小判は商人が道で拾ってしまったという。
原典より
ブニの無いものはどうしても仕様がないもんじゃ。—— ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。