中川土手で聞いた電撃のような声
どんな伝承か
五井昌久は、憑かれたように病気治しに歩きまわり神を呼び続ける生活を送っていた。ある日、亀有の家を出て病家へ向かう道すがら、病人のことも考えず、ただ神様、神様と念じながら胸を張って歩いていた。中川土手の桜若葉は日に映え、川面のさざ波が光っていた。自然の美しさに半ば溶け込みながら、世から病苦と貧苦を除かねばこの美しさに全身を溶け込ませられないと感じ、私のいのちを神様のおしごとにお使いください、と祈り続けた。向こう岸へ渡る舟着場まで来て土手を降りようとした瞬間、お前のいのちは神がもらった、覚悟はよいか、という電撃のような声が響き、彼は心で「はい」と答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鎮魂行法論――近代神道世界の霊魂論と身体論(津城寛文・津城寛文・宗教学)
『鎮魂行法論――近代神道世界の霊魂論と身体論』は、津城寛文が著し、春秋社から刊行された宗教学の研究書である。本田親徳・出口王仁三郎・浅野和三郎・友清歓真・川面凡児・田中治吾平・宮地水位など、近代以降の神道界とその周辺に現れた鎮魂行法家の系譜をたどり、その鎮魂帰神説や霊魂観をシャーマニズム研究の観点から整理する。序章と全七章からなり、第一章で行法家の群像を描き、第七章では「宗教的身体境界」の考え方によって鎮魂行法を類型化する。