人魂の落ちた跡から湧く蚋
どんな伝承か
ある人が葛西とかいうあたりへ釣りに出たところ、竿にも身のまわりにも蚋がおびただしく群がった。そばにいた老人が言うには、この辺りに人魂が落ちたのだろう、だからこれほど蚋が集まるのだと。別の者はこう語った。夜明け前に釣りをしていると人魂が飛んできて、近くの草むらへ落ちた。何が落ちたのかと草をかき分けてみると、泡立ったものがあって臭気を放っていたが、ほどなくそれが蚋になって飛び散った。老人の言うことにも理があるというのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・昭和(戦中))
生物学者・小泉丹『科学的教養』(戦中刊)。国民の科学性とは科学知識の普及ではなく科学的態度であるとし、科学的・非科学的の境界を吟味したうえで、怪異談を科学的に検討する。