縁の深い者にだけ聞こえるタマセの音
どんな伝承か
千葉県印旛郡の川上村では、人魂をタマセと呼ぶ。斎藤源三郎の報告によれば、死のしらせは音でも届く。縁の深い家の雨戸に強く当たって大きな音を立てたり、庭のどこかで音を出したりするが、その音は家族のなかでもとりわけ縁の深い者ひとりにしか聞こえず、ほかの者の耳にはまったく届かないという。姿の方は居合わせた者みなに見える。まるく黄色い光の球で、三メートル余りの長く青い尾を引き、家の棟すれすれの高さを飛ぶ。若い者のは速く、年寄りのは遅い。斎藤氏自身も少年のころに三度見ており、人の頭よりやや小さく、放物線を描いて数丁ほど飛んで消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。