ランプのホヤに浮かんで睨む人の顔
どんな伝承か
信州小諸町に住む若林時次郎の妾が、ある夜ランプのホヤに人の顔が浮かんでこちらを睨むのを見て驚き、叫んで隣人に知らせた。調べてみるとホヤの裏側に付いた油煙が、眉・目・鼻・口まで揃った人の顔の形になっており、絵師でも及ばないほど精巧に見えたという。これは光線の反射や汚れが偶然人影を浮かび上がらせた、いわゆる物理的な錯視による幽霊の一例として紹介されている。
原典より
信州小諸町の若林時次郎の妾は、ランプのホヤに人面が化してにらむのを見、驚き叫び出でて隣人に告げたが、…—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。