預けた金を追って店先に立つ老人
どんな伝承か
『耳袋』の一条。天明のころ、浅草のあたらし橋あたりに、その日稼ぎの行商でどうにか暮らしを立てる律義な男がいた。こつこつ貯めた十両ほどのうち、二両と銭十四、五貫文を同じ町の者に預けていたが、その預かり主が病がちになったので、男は金を持って見舞いに出向き、預かり物を返そうとした。自分が死ぬとでも思うのかと渋る相手に、病なら物入りもあろう、要らなければ快気してからまた預かってくれと言い置いて帰る。ところが男自身がほどなく死んだ。身寄りがないため家主らが家財を改め、残った十両余りを分けてしまう。するとその日から、老人が元の店先に立つ姿を見たという噂がしきりに立ち、恐れた者たちは金を使って手厚く弔った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・昭和(怪談集成))
日本各地の幽霊・人魂・生霊の実話怪談を十章+幽霊外伝に分類して集成する。