倒れる幟で吉凶を当てる狐憑き
どんな伝承か
もと本所に住んでいた人の語りとして伝わる。本所割下水に住んでいたころ、隣家の女子に狐が憑いてさまざまなことがあったので、毎日行って見ていた。その狐憑きは、隣家の幟が風も吹かないのに倒れるのを見て、ああ、あの家の小児が病死するだろうと言い、木の枝が折れたのを見てはあの家に何事かがあると言い、竿が倒れるのを見てはあの家の主人に事があると言った。果たしてそのとおりになるので、どうして分かるのかと尋ねると、女は、すべて家々に守神があり信ずる仏神があって、吉凶とも物に託して知らせてくださるのだが、俗眼にはそれと気づかず過ぎてしまうことがあるのだ、と答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。