手を触れずに取れた黒子と虫歯
どんな伝承か
明治四三年五月、埼玉県本庄町を訪れた快児・浜口熊嶽が、一般患者への施術を行った。上毛新聞の記者が実見したところによれば、三十人目あたりで右頬に黒子のある娘を見る間に抜き取り、続けて虫歯を二本抜いた。患部に一切手を触れず、痛みも感じさせずに黒子や歯を取り去るその軽業のような施術に、患者はもちろん記者までもが狐につままれたような思いをしたという。
原典より
最も不思議なのは決して患部に熊嶽の四肢五体を触れしめず些の痛みなく虫歯を抜取り黒子を取去る事である。—— 霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。