足を引く寝返り本尊
どんな伝承か
ある時、住職が檀家の仏事に招かれ、上等の酒に酔って寺に帰るなり帯も解かずに寝てしまった。ところがその夜は、眠りついたと思うと誰かに起こされ、起き上がっても誰もいない。横になれば体をゆすられ、そのたびに足を横へ引っ張られて、一晩中よく眠れなかった。翌朝考えてみると、酔ったあまり気づかずに足を本尊の方へ向けて寝てしまったのだった。その後も、寺での酒盛りで酔いつぶれて足を本尊に向けて寝ると、必ず夜中にゆり起こされて向きを変えさせられることが度々あった。誰いうとなく寝返り本尊と呼ばれ、気味悪がって寺に泊まる者がいなくなり、ついに無住の寺となった。窪倉の帰敬山安楽寺の本尊で、高寺おろしと称される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。