虚空蔵の願かけが招いた嫁
どんな伝承か
若宮地区のある男は生まれつきたいそう醜く、三十になっても嫁がもらえなかった。せめて金を貯めて養子を迎えようと、柳津の虚空蔵に金持ちになれるよう三七日の願をかけ、雨の日も風の夜も休まず二十一日間、早坂峠を越えて通った。財布を拾うこともなかったが、身弱だった体がにわかに丈夫になり、血色も人相も見違えるほどよくなった。ある年の春の夕方、男の子を背負った女が訪れ、虚空蔵のお告げであなたの家で働き子を育てよと言われて来たと嘆願した。二人は憎からず思うようになり、親子三人で峠を越えて円蔵寺の本堂で三々九度の杯を上げた。これがこの地方の仏前結婚の始まりだという。
原典より
若宮地区のある男は、生れつきたいそうみにくかったので、三十になっても嫁をもらわれなかった。—— 会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。