茶碗から生まれた子と茶碗塚地蔵
どんな伝承か
塔寺が宿場として栄えたころは旅館兼茶屋が七、八軒あり、飯盛女を置いて繁盛していた。その一軒の中村屋に初音という美しい女中がいた。ある日、行脚の若い美僧が泊まったので初音は一目で心を奪われて世話をやいたが、道徳堅固の僧は応じず、翌朝いずこともなく旅立ってしまった。初音は忘れられず、僧の使った茶碗を自分で使い続けるうち身重となり、やがて男の子を産んだ。後年ふたたび中村屋に泊まった美僧は、その子は思いがこもって生まれたもので本当の人間ではないと言い、経を唱えながらあの茶碗を子の頭にかぶせると、子の姿は消えてしまった。供養のため茶碗と一字一石を埋め、その上に祭ったのが茶碗塚地蔵である。
原典より
むかし塔寺が宿場として栄えた頃は旅館兼茶屋が七、八軒もありそれぞれ飯盛女を何人もおいて繁盛していた。—— 会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。