命を十年縮めて雨を呼んだ法印
どんな伝承か
夏の日照りが続き、とくに土地の高い勝方村は水利が悪く、西山の沢の堤も涸れ果てて底の泥が割れる有様であった。村人は毎日肝煎の家に集まって相談したが、ほかに水を引く手だてがなく、ついに雨を天に祈ることにし、村の寺条に住む大法院小林信静という法印に頼み込んだ。法印は容易ならぬ大祈祷だと一度は断ったが、村人の懇願に、八十三までの寿命を十年縮めて祈ると決心し、西山の中腹の薬師堂で一週間の断食参籠をした。満願の日、三町ほど西の山中の新堤のほとりに札を立てて最後の祈祷を終えると、晴れた空に黒雲がわき、家に着くころには大雨が沛然と降ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。