饅頭で送り返す十文字原のおまん狐
どんな伝承か
語り手の母の祖父にあたる人が片門の戸長を務めていたころ、毎日十文字原を通っていた。夜が遅くなると必ずおまん狐が後をつけて来たので、遅い時は饅頭を買って来て、村の入口まで送って来た狐に、あとは帰れよと言って与えると、狐はそれを拾って帰ったという。また昔は婚礼によばれた帰りに引物の魚を藁のつとに包んでもらい、こうもり傘の先に吊るして肩に担いで帰ったが、十文字原を通るとおまん狐が出てその魚を取ってしまうという話も聞いた。十文字原の名は、戦に負けたある武士がこの原で十文字に切腹したことに由来すると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。