皮ごとバナナを食べた法印の機転
どんな伝承か
牛沢の法印は厳格な人物で、もともと倹約家で贅沢をしなかった。あるのどかな日、祝い事で知人の家に招かれ、客が集まって座敷がにぎやかになり、やがて膳が運ばれて宴会に入った。その膳には、法印が今まであちこちの座敷でご馳走になっても食べたことも見たこともない物が皿に載っていた。何であるか知らぬまま皮もむかずにがぶりと口へ入れると、隣の席の者が、それは南蛮渡来のバナナという果物で、こうして皮をむいて食べるのだと笑いながら教えた。すると法印はとっさに、皮をむかずに食べたらどんな味かと試したがなかなか結構な味だと言い、宴席で笑われずに済んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。