主の言葉を裏切る勘兵衛馬
どんな伝承か
むかし青木に勘兵衛という駄賃取りがいた。たいそう丈夫で利口な馬を飼い、その背に荷を積んで坂下と喜多方の間を往復して暮らしを立てていた。ところがこの馬は利口すぎて人の言葉を解するようになった。勘兵衛が家の者に、明日の朝は坂下に行って荷をつけてくると話し、翌朝馬を引き出そうとすると、北の喜多方を向いたきり押しても引いても動かない。その日は仕方なく休み、夜になって明日は喜多方へ荷を運ぼうと家人に話して寝ると、翌朝は南の坂下を向いたきり動かない。さすがの勘兵衛も愛想が尽きて売ってしまい、以来この地方では人の言うことを聞かない男を勘兵衛馬と呼ぶという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。