津尻の森に現れたおぼこだき
どんな伝承か
宇内の四ッ谷から津尻の村南に出て、山の根岸を旧河川に沿って下ると長井に出る。その途中は杉の大木が茂る暗い一本道で、森に入って二百メートルほどの道の東側に供養塔が一基あった。さつきのころ、夜遅くここを通りかかった下級武士の前に、髪を乱した若い女が子を抱いて現れ、髪を結う間だけ子を抱いてくれ、泣かせたら命はないと言った。武士は子を外向きに抱き、羽織の紐を解いて遊ばせ、泣かせずに済んだ。抱いた子は石のように重かったという。女は髪を結い終えると礼を述べて闇に消えた。武士はのちに立身出世し、以来この近村では前垂れの紐を左右同じ長さにしないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。