村を転げまわる乗丹坊の火の車
どんな伝承か
上宇内の村に乗丹坊という和尚が住職していた。学問はもとより衆僧にすぐれ、道徳堅固で多くの人々から尊敬されていた。そのころ肝煎の嫁に子が生まれ、子守として利口で並すぐれた美人の娘が雇われた。娘は子を背負って毎日のように寺へ遊びに来た。和尚はこの娘に魅せられ、ついに人目をしのぶ仲になった。噂は村中に知れ渡り、これまでの尊敬は軽蔑に変わって檀家は寺に近寄らなくなり、和尚は生活にも困った。そのころから毎晩のように火の車が村の中をころげ歩くようになり、どの家も怖くて雨戸を閉め早寝した。村人は、あれは和尚が自分の行いを悔い、良心の苦しみに堪えず転げ歩くのだろうと語り合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。