一夜で今市へ走る怪盗塔寺八反
どんな伝承か
塔寺に塔寺八反とあだ名された泥棒の名人がいた。品物を盗むとその夜のうちに山王峠を越して今市や鹿沼の朝市で金に代え、午前中に帰って午後は寝ていたという。今も八反道路という名が、塔寺から南の杉・船窪・牛沢・大村・勝方などに残る。足が早いうえに大変な力持ちで、新舘の家から米五俵を盗み、一俵を口にくわえ、一俵ずつさげ、両脇に一俵ずつ挟んで栗村の堰堀を跳び越えた。追ってきた家の者に、一俵ずつ堰堀を越して投げ返したという。のちに天命を知って若松の役所に自首し、故郷での処刑を望んだ。護送の途中で縄を切って砂原を走り、また戻って縛られた。処刑は火あぶりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。