蓬と菖蒲に阻まれた女房の首
どんな伝承か
或る所におつなという女が夫と暮らしていた。夫が旅に出た留守に婆々が来て、おつなの綯う縄を炉にくべては燃え端を食い、また明日来ると言って帰った。恐れたおつなは橡の実を三粒持って二階の葛籠に隠れたが、実が尽きて見つかり、体を食われて首だけ皿に残された。帰った夫が戸棚を開けると首が飛びついた。夫は首を抱えて旅籠へ行き、膳に取りついた隙に飯鉢をかぶせて逃げた。首は転がり落ちて追いかけたが、夫が蓬と菖蒲の間に隠れると近づけなかった。五月五日に蓬と菖蒲を軒に下げるのはこのためだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。