八幡講の相撲で三十人を投げた大食漢
どんな伝承か
福島には、底知れぬ大食いで怪力の男の話が残っている。五十人分の煮ぼうとの鍋を、一杯くらいかと思われたのにすっかり平らげ、体に毒ではないかと言われると、なんでもないと逆立ちで歩いてみせた。柏餅は味噌こしに二杯、夏の祇園に招かれたときは遠慮しながらも饅頭を九十個食べ、出した側を驚かせたという。飯は一度に一升を食べ、八十貫の荷を担いだ。無精者で、小柄な女房にリヤカーを引かせて出歩いたともいう。八幡講の相撲には杖を二本ついて現れ、今の若い者は弱いと言って怒らせ、相手になった三十人を次々に投げ飛ばしたという。
原典より
それじゃしょうがねえからおれとやるか、三十人、きれいに放り投げた。—— 千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告から、言語伝承の章を中心に抜き出したテキストである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や光恩寺、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカ(狐)に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、採集した集落名を括弧で添えて短く記す。冒頭には正月の松飾りと大晦日の行事の記事が、途中の文から始まる形で残る。