洋傘を取りに戻っても捕まらない杉田伝蔵
どんな伝承か
福島の杉田伝蔵は信心深い人で、伊勢参りに二十回ほども出かけた。足もたいへん速く、博打の場に伝蔵がいると分かると追いかけるのをあきらめられたほどで、警察の帳簿にも名が載っていた。あるとき寺で賭場を開いていたところへ巡査が踏み込んできた。逃げ出したものの洋傘を置き忘れたことに気づき、引き返してそれをつかんでから再び逃げたが、それでも巡査は追いつけなかったという。
原典より
それで、ひっけって、洋傘持って逃げたが、巡査がおっつけなかった。—— 千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告から、言語伝承の章を中心に抜き出したテキストである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や光恩寺、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカ(狐)に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、採集した集落名を括弧で添えて短く記す。冒頭には正月の松飾りと大晦日の行事の記事が、途中の文から始まる形で残る。