橋田村の唸る大欅と提灯が消える怪
どんな伝承か
新潟県の村松町から一里へだてた中蒲原郡橋田村に曹洞宗泉蔵寺があり、その近くに関谷安次という家があった。屋敷内には数百年を経た高さ五間、幹の周囲約一丈の大きな欅の木がある。ある夜九時ごろ、関谷清一郎の弟の清次が地蔵の祭りの帰りにこの場所にさしかかると、持っていた提灯がふと消え、同時に病人が呻くような声が欅の根っこから発せられた。清次は震えあがって逃げ帰った。翌日、若者三名も同じ呻き声を聞き、村中に伝わった。三日目の夜には二百人ばかりが集まり巡査や区長も加わったが、音が根元か樹上かも分からず、午前二時ごろまで続いた。金甕が唸るとも、昔の墓地だから亡霊の仕業ともうわさされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。