盗まれた銅仏像が泣いて盗人を顕す
どんな伝承か
『日本霊異記』中巻第二十二話。聖武天皇の御代、和泉国日根郡の盗人が同じ郡の尽恵寺に忍び込み、銅の仏像を盗み出した。馬に乗って道を行く人が、どこからともなく泣き叫ぶ声を聞き、気になって行きつ戻りつするうちに場所の見当をつけた。従者に家の中を探らせると、仰向けにした仏像の手足を切り取っている者がいた。問いただすと尽恵寺の仏像とその盗人であった。寺の僧と檀越が駆けつけて像を直し、飾りを新たにして元の座に戻し、泣いて寺で殯をしたという。盗人はのちに捕らえられて獄に入れられた。
原典より
聖武天皇の御代に、同郡の尽恵寺に侵入して銅製の仏像を盗み出した。—— 日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史(山折哲雄・山折哲雄・宗教学・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史(山折哲雄・山折哲雄・宗教学・1976年(昭和51年))
『日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史』は、山折哲雄が霊魂と身体の相関を軸に日本人の霊魂観を論じた論考集で、あとがきは一九七六年六月の日付である。序章で和辻哲郎・津田左右吉・折口信夫・柳田国男らの霊魂論を検討し、『日本霊異記』の蘇生説話にみる遊離魂と殯、天皇の病と看病僧の呪法、平安宮廷の物のけと不動法、源信『往生要集』の観想を各章で論じる。雑誌に発表した論文をまとめ、巻末に物のけ現象の資料と憑霊年表を付す。