二人衣女の身代り蘇生
どんな伝承か
『日本霊異記』中巻第二十五話。聖武天皇の御代、讃岐国山田郡の布敷臣衣女が病み、門前に山海の珍味を供えて疫病神をもてなした。衣女を召しに来た閻羅王の使いの鬼はその饗応を受けて恩を感じ、同姓同名の女を身代わりに連れて行こうと言う。衣女は同国鵜垂郡の衣女のもとへ鬼を案内し、そちらの衣女が王のもとへ引かれた。王は偽物と見抜いて山田郡の衣女を連れ戻させたが、赦された鵜垂郡の衣女が家に帰ると、亡骸はもう焼かれていた。王の言葉で、まだ焼かれていない山田郡の衣女の体に入って蘇り、四人の父母と両家の財をともに得たという。
原典より
かくして衣女Bの霊は衣女Aの肉体に宿り、衣女Aの霊はそのまま閻羅王のもにとどまることになった。—— 日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史(山折哲雄・山折哲雄・宗教学・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史(山折哲雄・山折哲雄・宗教学・1976年(昭和51年))
『日本人の霊魂観――鎮魂と禁欲の精神史』は、山折哲雄が霊魂と身体の相関を軸に日本人の霊魂観を論じた論考集で、あとがきは一九七六年六月の日付である。序章で和辻哲郎・津田左右吉・折口信夫・柳田国男らの霊魂論を検討し、『日本霊異記』の蘇生説話にみる遊離魂と殯、天皇の病と看病僧の呪法、平安宮廷の物のけと不動法、源信『往生要集』の観想を各章で論じる。雑誌に発表した論文をまとめ、巻末に物のけ現象の資料と憑霊年表を付す。