盆の月夜に寄せては消える亡者舟
どんな伝承か
津軽の鰺ヶ沢では、ある年の盆の月夜、村の浜辺を通ると、沖から櫓をこぐ音をさせて舟が岸へ向かってくる気配がした。村じゅうの者が浜に集まって着くのを待ったが、舟は帆をかけたまま沖にとどまり、少しも近づかなかった。これも時おり姿を見せる亡者舟だという。さらに別の盆の晩には、沖から寄ってくる舟に浜からおーいと呼ぶと舟からも同じ声が返り、舟はぐいぐいと浜に寄ってはっきり姿を見せた。港の近くで帆を下ろしたので、引き綱をよこせと叫んだとたん、舟の姿はかき消えたという。
原典より
その舟からはヨイヨイという掛け声が聞こえてくるという—— 暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。