岩木山中で大人に運ばれた九助
どんな伝承か
中村沢目蘆谷村というのは岩木山の麓にあって、田畠も多くないので、炭を焼き薪を樵って生計の助けとしていた。この里の九助が斧を携えて山に入り、二里ばかりも登ると、見たこともない広漠とした平地に出た。道に迷ったと悟って佇んでいると、谷蔭に人語が聞こえたので降りて見やった。身の丈七八尺ほどの大男が二人、岩根の苔を摘み取っている。背と腰には木の葉を綴ったものを纏い、面構えは色黒く、眼は円く鼻はひしげ、蓬頭で鬚が伸びていた。かねて赤倉に住むと聞いた大人かと逃げようとして石に躓き、かえって大人の傍に倒れた。大人は九助を抱えて嶮岨を駆け下り、地上に下ろすと姿を消したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。